向陽台ファミリークリニック様
導入事例

AI医療機器が変えるプライマリ・ケアの現場。nodoca導入で地域の健康を守る

向陽台ファミリークリニック

院長:中島徹 先生
nodoca導入時期:2023年春
北海道千歳市に位置する地域密着型の内科・小児科、北海道家庭医療学センター 向陽台ファミリークリニック。院長の中島先生が就任して以来、地域住民への家庭医療の提供に尽力しています。2022年にはnodocaを導入。AIを活用した検査が地域医療に新たな風を吹き込んでいます。

今回は中島先生にお話を伺い、プライマリ・ケアの現場におけるnodoca活用の状況、さらにAI技術そのものがプライマリ・ケアに与えるインパクトなどを深く掘り下げます。

住民からの要望で地域医療の要に

▲中島徹(なかじま・とおる)/向陽台ファミリークリニック院長。札幌医科大学医学部を卒業後、江別市立病院、北海道家庭医療学センターで勤務。2017年に同クリニック院長に就任。日本プライマリ・ケア連合学会認定家庭医療専門医・指導医。

——どのような経緯でクリニックが開かれたのでしょうか?

中島先生:クリニックの開設は2017年4月に遡ります。かつて千歳市向陽台は医療過疎地でした。人口が増加しているにも関わらず医療機関が不足しており、地域住民は市街地まで20〜30分かけて病院を受診していたそうです。また、開設前に行われた住民アンケートにより、幅広い年代・疾患に対応する必要性が浮き彫りとなっていました。

このような状況を受け、地域から母体となる北海道家庭医療学センター(HCFM)へクリニック設立の依頼があったわけです。HCFMでは多くのクリニックを継承・公設民営などの形で運営していますが、新規立ち上げについてはHCFMにとっても初めてであり、大きな挑戦となる決断でした。当時、私はHCFMでクリニック経営を学ぶフェローシッププログラムを修了していました。そこで地域のニーズに対応する人材として選ばれ、院長に着任することとなったのです。

——開業後、数年でコロナ禍を迎えました。JMATの指定を受けてクラスター感染の現場に入るなど、初期から新型コロナの対応に力を入れられていましたね。

中島先生:2020年のゴールデンウィーク前後、隣接している高齢者施設で感染が拡大して予想外に事態が悪化していました。当時、重症患者の入院が優先されており、どうしても軽症の患者さんが後回しになり、多くの人が適切なケアを受けられずにいたのです。これを受けて私たちのチームが施設の中に入ることを決め、国立感染症研究所の指導のもと、新たに症状が出た方(入居者および職員)に対して検査を含めた診療を実施したり、施設療養者に対して診療を行い、療養方針に関する指導や入院の必要性の判断などを実施したりしました。

——新型コロナが5類感染症に移行して診療体制は変化しましたか?

中島先生:移行前は、発熱外来を特定の時間に限定したり、診療する場所も分けたりしていました。患者数自体も制限していましたね。そのため、風邪の症状がある方が気軽に受診するのは難しかったです。移行後の現在はそのような制限を設けずに、基本的にはインフルエンザと同様の対応をしています。熱が出ている方は診察室を分けて診ています。

——併設の訪問看護ステーションや隣接している高齢者施設とは、普段どのように連携されているのでしょうか。

中島先生:いずれとも緊密に連携しています。元々、訪問看護ステーションは高齢者施設と同じ法人による運営でしたが、その後HCFMに移管されて建物もクリニックと同居しています。現在では、訪看に在籍している看護師たちがクリニックの外来診療や訪問診療にも参加するようになり、一体的に運営を行っています。
また、コロナ禍で施設内の感染防止対応にも関わりましたが、通常時も高齢者施設の利用者に対して定期的に訪問診療などを行っています。

プライマリ・ケアの現場へ与えるAIのインパクト

——そもそもプライマリ・ケアとはどのような概念なのでしょうか?

中島先生:プライマリ・ケアは、一言で言えば患者さんの身近にあり何でも相談に乗れる総合的な医療のことです。現在は「家庭医療」や「総合診療」も同義として扱われていますね。

 

プライマリ・ケアの特徴は5つあります。まず「近接性」。患者さんが地理的、心理的に近い関係にあることです。次に「継続性」、生涯を通じた継続的なケアを提供すること。「包括性」は、様々な医療ニーズに対応し、必要に応じて他の専門家と連携することです。そして「協調性」、多様な専門医や地域の資源と協力して、患者さんに最適なサービスを提供すること。最後に「文脈性」、患者さんの生活背景や状況に合わせた医療を提供することです。

▲プライマリ・ケアの5つの理念(日本プライマリ・ケア連合学会HP、中島先生のお話をもとに作成)

プライマリ・ケアは患者さんの個別の状況や家族、地域にも目を向けて、かかりつけ医として機能することが重要です。ただし、複雑な疾患や深い知識が必要な場合は、専門医の力も借りながら患者さんの状況に合わせて医療を提供します。病気を深く診るというよりも、患者さんの置かれている状況に応じたケアを重視することがプライマリ・ケアの専門性です。

——ありがとうございます。クリニックの母体となる北海道家庭医療学センター(HCFM)はプライマリ・ケアの実践や専門医の養成をミッションとされているそうですね。

中島先生:HCFMは1996年に設立され、日本で初めて総合診療と家庭医療の研修プログラムを開始しました。主に北海道を拠点としていますが、全国にネットワークを広げつつあります。

また私たちの組織では、日本専門医機構による総合診療専門医と、プライマリ・ケア連合学会で認定される新・家庭医療専門医の資格を取得することができます。総合診療専門医は3年間の研修で取得可能ですが、新・家庭医療専門医はより深い専門性を求められ、4年の研修が必要です。

——プライマリ・ケアの現場において、AIはどのような影響を及ぼすと考えますか?

中島先生:AIはプライマリ・ケアの現場に大きな影響を及ぼす可能性があると思います。多くの場合、プライマリ・ケアでは病気の正体が分からない状態で患者さんが診察に来られます。この初期段階において、AIの方が人間よりも臨床推論が得意かもしれませんね。AIが診断をサポートすることで、診断精度の向上に役立つこともあり得ます。

特に画像診断の分野では、AIがレントゲンやCTの所見を解析し、初期の異常を見逃さずに検出できる医療機器が既に存在します。AIを活用した問診ツールも開発され始めており、患者さんがAIを使って自分の状態を事前に分析し、その情報を診察に持ち込むような時代が来るかもしれません。

診察室とは別室で発熱患者を検査

——導入後、nodocaに対してどのような印象を持ちましたか?

中島先生:インフルエンザ感染が疑われる発症早期の患者さんや鼻粘膜を綿棒で拭う処置が苦手な患者さんに対して、特に有益だと思います。一般的にウイルスが十分に増殖していない発症早期では、抗原検査の感度が下がると言われています。そのため、nodocaを発症早期やスワブ検査が苦手な方に積極的に使用しています。それぞれの検査の特徴と患者背景に応じて、nodocaと抗原検査を使い分けています。

また、nodocaの検査に必要な問診の内容は、ウェブ問診システムで事前に患者さんから得られた情報を入力しています。今後は両者が連携されて、問診内容がnodocaに直接反映できるとより良いかもしれませんね。

——院内では、nodocaはどのような場面に利用されていますか?

中島先生:先ほども触れたように、私たちのクリニックでは発熱初期の患者さんや従来の検査が苦手な患者さんに使っています。新型コロナなども同じタイミングで検査が必要な場合は、インフルエンザ/コロナ同時検査キットを使うこともありますが、インフルエンザのみを素早く調べたい場合はnodocaを使用しています。抗原検査と並んで、インフルエンザ検査のあたらしい選択肢の一つとして、患者さんに提供しています。

——発熱症状のある患者さん向けにどのようなオペレーションを組まれていますか?

中島先生:まず患者さんが来院されたら事務の窓口で対応して、有熱室という診察室とは別の場所で待機してもらいます。受診前や待ち時間の間に問診を行い、問診の結果を見て患者さんが検査を希望されている場合は、先に検査を実施。その結果を受けて診察を行います。基本的には患者さんは有熱室から移動せずに、有熱室内で検査や診察が完結するような仕組みを取っています。

訪問診療の場にもnodocaを

——今後想定されているnodocaの利用シーンを教えてください。

中島先生:具体的なことはメーカーと相談することになるとは思いますが、今後は訪問診療での活用も考えています。訪問診療では携帯性が重要なので、現在よりもデバイスが小型化されればより使いやすくなるでしょう。また、訪問診療の患者さんは高齢者の独居または老々世帯で過ごしている家庭が多く、事前に問診情報を入力するのが難しい場合もあります。今後、問診入力の簡素化や機能向上により、さらに活用の幅が広がる可能性がありそうです。

——クリニックとして、今後どのような展望を持たれていますか?

中島先生:まず、地域のかかりつけ医としての機能を強化し、何かあった時に最初に相談する場所でありたいと考えています。これは、クリニックのビジョンの一つにも位置づけられていて、患者さんがどんな問題でも気軽に相談できる場を提供したいという思いがあります。

また、地域の介護・医療・福祉関係者が一体感を持つことも大切です。僻地では、その地域の窓口同士が情報共有しあって風通しの良い関係を構築していることが多いです。向陽台でも同様に、地域にどんな方がいて誰が何で困っているのかといった情報を把握・共有し合って、地域のニーズに細やかに対応できるような体制を作りたいと思います。

インタビュー・写真:水谷秀人

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