▲中島徹(なかじま・とおる)/向陽台ファミリークリニック院長。札幌医科大学医学部を卒業後、江別市立病院、北海道家庭医療学センターで勤務。2017年に同クリニック院長に就任。日本プライマリ・ケア連合学会認定家庭医療専門医・指導医。
中島先生:移行前は、発熱外来を特定の時間に限定したり、診療する場所も分けたりしていました。患者数自体も制限していましたね。そのため、風邪の症状がある方が気軽に受診するのは難しかったです。移行後の現在はそのような制限を設けずに、基本的にはインフルエンザと同様の対応をしています。熱が出ている方は診察室を分けて診ています。
中島先生:プライマリ・ケアは、一言で言えば患者さんの身近にあり何でも相談に乗れる総合的な医療のことです。現在は「家庭医療」や「総合診療」も同義として扱われていますね。
プライマリ・ケアの特徴は5つあります。まず「近接性」。患者さんが地理的、心理的に近い関係にあることです。次に「継続性」、生涯を通じた継続的なケアを提供すること。「包括性」は、様々な医療ニーズに対応し、必要に応じて他の専門家と連携することです。そして「協調性」、多様な専門医や地域の資源と協力して、患者さんに最適なサービスを提供すること。最後に「文脈性」、患者さんの生活背景や状況に合わせた医療を提供することです。
プライマリ・ケアは患者さんの個別の状況や家族、地域にも目を向けて、かかりつけ医として機能することが重要です。ただし、複雑な疾患や深い知識が必要な場合は、専門医の力も借りながら患者さんの状況に合わせて医療を提供します。病気を深く診るというよりも、患者さんの置かれている状況に応じたケアを重視することがプライマリ・ケアの専門性です。
中島先生:具体的なことはメーカーと相談することになるとは思いますが、今後は訪問診療での活用も考えています。訪問診療では携帯性が重要なので、現在よりもデバイスが小型化されればより使いやすくなるでしょう。また、訪問診療の患者さんは高齢者の独居または老々世帯で過ごしている家庭が多く、事前に問診情報を入力するのが難しい場合もあります。今後、問診入力の簡素化や機能向上により、さらに活用の幅が広がる可能性がありそうです。
インタビュー・写真:水谷秀人